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ピットインに初めてスネアケースを持って入って行った時、従業員は私を恐れた。チンピラが幾らか金をせしめようと、因縁をつけに来たと勘違いしたようだ。 そういえば、大学受験の日も不良少年の家出と間違えられて、上野公園の派出所で取り調べられた。 いずれにしても音楽を志すカッコ良い若者ではなかったことは確かだ。 訳あって大学4年にもなろうという時に退学届けを出し、クラッシックの世界からジャズの世界に飛び込んだ。 自分以外に味方はいなかった。 丁度傷ついた牛のように何に対しても攻撃的であったに違いない。 相当に怖かっただろう。 だから、山下洋輔に「一緒にやろう」と誘われた時はうれしかった。 4ビートもろくに叩けない私に山下は「ジャズでなくて良い。思ったとおり、感じたままに叩いてくれ」と言った。 「それなら任せとけ。やめろと言っても叩き続けるぞ」と、死ぬ気で叩いた。 お客さんはいつも5人といなかった。 しかも演奏が始まると3人はすぐ帰る。 しかし、そんなことはどうでも良かった。 お客さんが居ようが居まいが、帰ろうが帰るまいが、とにかく叩いた。 シンバルが割れそうになると、もっと叩いた。 バスドラムのペダルが折れると足でバスドラムを蹴った。 お金は電車賃ぐらいしか貰えなかったが、店の裏で従業員と一緒のご飯をいただいた。 食べながらも笑いが出るほどうれしかった。 その頃から私は一生懸命が好きになった。 今でも一生懸命なドラマーでいたい。 でも一生懸命が嫌いな人もいる。 だから誰とでも分かり合えるとは思っていない。 ピットインで聞いてくれる人の一人と仲良くなれればそれで良い。 そして、あなたとも分かり合える仲間になれたらうれしい。 (2004.10 Shinjuku Pit Inn flyerより) ▲ |
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